「詳しい説明は割愛します」のように、
「割愛」という言葉は仕事や文章の中でもよく使われます。
「省略する」「不要な部分を削る」という意味だと思っている人も多いかもしれません。
しかし、「割愛」の本来の意味には、単に不要なものを省くのではなく、
惜しいと思うものを思い切って手放したり、省いたりするというニュアンスがあります。
『デジタル大辞泉』でも
「惜しいと思うものを、思いきって捨てたり、手放したりすること」と説明されています。
この記事では、「割愛」の本来の意味や「省略」との違い、
現在の使われ方、正しい使い方を例文とともに分かりやすく解説します。
「割愛」の意味とは?
「割愛」は「かつあい」と読みます。
本来は、
惜しい、手放したくないと思うものを、思い切って手放したり省いたりすること
を意味します。
例えば、紹介したい事例がたくさんあるものの、記事の長さの都合ですべて載せられない場合、
紙幅の都合により、一部の事例は割愛します。
と表現できます。
ここでは「その事例は不要だから削る」のではありません。
できれば紹介したいけれど、事情があって省くというニュアンスがあります。
『精選版 日本国語大辞典』にも
「惜しいと思いながらも省略したり捨てたりすること」という意味が掲載されています。
「割愛」の由来
「割愛」には、もともと愛着の気持ちを断ち切るという意味があります。
古くは仏教に関係する文脈でも使われ、愛着や執着を断ち切ることを表していました。
そこから、惜しいと思うものを思い切って手放すという意味につながっています。
つまり「割愛」は、
愛着があるものを断ち切る
というイメージを持つと、本来の意味を覚えやすくなります。
「割愛=不要なものを省略する」は間違い?
現在では、
時間がないので、不要な説明は割愛します。
のように、単純に「不要な部分を省く」という意味でも「割愛」が使われています。
ただし、これは本来の「惜しいと思いながら手放す」という意味とはニュアンスが異なります。
文化庁の令和3年度「国語に関する世論調査」では、
「説明は割愛した」という例について、「割愛する」の意味を尋ねています。
結果は次のとおりです。
| 意味 | 割合 |
|---|---|
| 不要なものを切り捨てる | 65.3% |
| 惜しいと思うものを手放す | 23.7% |
| 両方の意味 | 4.5% |
| 全く別の意味 | 5.0% |
| 無回答 | 1.5% |
辞書などで本来の意味とされてきた「惜しいと思うものを手放す」を選んだ人は23.7%でした。
一方、「不要なものを切り捨てる」を選んだ人は65.3%です。
つまり、現在は本来とは異なる意味で理解している人の方がかなり多いことが分かります。
辞書によって「割愛」の扱いが違う?
ここが「割愛」の面白いところです。
文化庁の会議で示された辞書編集者の資料では、
2020年以降に改訂された国語辞典について、
新しい「単に省略する」という使い方への対応が分かれていると整理されています。
例えば、三省堂国語辞典第8版では「省略する」という新しい意味も掲載されています。
一方、明鏡国語辞典第3版では、
「不必要だと思うものを切り捨てる」という意味で使うことを誤りとしています。
また、新選国語辞典第10版では、新しい意味には触れず、本来の意味を掲載しています。
つまり現在の「割愛」は、
本来の意味は明確に存在する一方、意味の変化が進み、辞書によって扱いが分かれている言葉
だと考えると分かりやすいでしょう。
「割愛」と「省略」の違い
二つの違いを整理すると、次のようになります。
| 言葉 | 主な意味・ニュアンス |
|---|---|
| 割愛 | 惜しいと思いながら、 事情があって省いたり手放したりする |
| 省略 | 一部を省いて簡単にする |
「省略」には、省くものを惜しいと思っているかどうかというニュアンスは基本的にありません。
例えば、
時間の都合により、詳しい事例は割愛します。
なら、「本当は紹介したい」というニュアンスを含ませることができます。
一方、
重複している説明は省略します。
なら、単純に必要性が低い部分を省く意味として自然です。
「割愛」の正しい使い方・例文
例文1:説明
時間の都合により、詳しい説明は割愛します。
説明したい内容はあるものの、時間の制約から省くという使い方です。
例文2:文章
紙幅の都合上、一部の具体例は割愛した。
本来なら紹介したい例を、文章量の都合で省いたことを表しています。
例文3:発表
興味深い資料はほかにもありますが、本日の発表では割愛します。
紹介する価値はあるものの、事情があって取り上げないという意味です。
「不要なので割愛します」はどう言い換える?
「不要だから削る」という意味を明確にしたいなら、
「省略します」
「削除します」
「省きます」
「ここでは触れません」
などの表現の方が分かりやすいでしょう。
例えば、
本筋とは関係がないので割愛します。
よりも、
本筋とは関係がないので省略します。
の方が、本来の意味との食い違いを避けられます。
現在は前者の使い方も広く理解されますが、
意味を正確に伝えたい文章では「省略」を選ぶと安心です。
「割愛」についてよくある質問
「割愛」の読み方は?
「かつあい」と読みます。
「割愛」は「省略」と同じ意味ですか?
近い場面で使われますが、本来のニュアンスは異なります。
「割愛」は、惜しいと思うものを事情があって省くことです。
「省略」は、一部を省いて簡単にすることを表し、「惜しい」という気持ちは必須ではありません。
ビジネスで「割愛します」は使えますか?
使えます。
例えば「時間の都合により詳細な説明は割愛します」のように、
本来なら説明したい内容を事情によって省く場合には自然です。
「割愛させていただきます」は間違い?
表現そのものが必ず間違いというわけではありませんが、
場面によっては「割愛します」だけで十分です。
文章を簡潔にしたい場合は、
詳細は割愛します。
とするとすっきり伝わります。
「不要な部分を割愛する」は誤用ですか?
本来の意味では、「惜しいと思うものを手放す」というニュアンスから外れます。
ただし現在は、単純な「省略」の意味でも広く使われており、
その新しい意味を掲載する辞書もあります。
一方で誤用とする辞書もあるため、辞書によって扱いが分かれています。
まとめ
「割愛」は本来、
惜しいと思うものを、事情があって思い切って手放したり省いたりすることを意味します。
単なる「省略」と完全に同じ意味ではありません。
覚えるなら、
本来:惜しいと思いながら省く・手放す
現在よくある使い方:不要なものを省略する
と整理すると分かりやすいでしょう。
文化庁の令和3年度調査では、「不要なものを切り捨てる」を選んだ人が65.3%だったのに対し、
本来の「惜しいと思うものを手放す」を選んだ人は23.7%でした。
現在は意味の変化が進んでいますが、文章で誤解を避けたい場合には、
「割愛」と「省略」をニュアンスに応じて使い分けるのがおすすめです。


