「琴線に触れる」の意味とは?「怒らせる」は誤用?正しい使い方

「琴線に触れる」の本来の意味と「怒らせる」という誤解を解説するアイキャッチ画像言葉の意味

「琴線に触れる」という表現を、

「相手を怒らせる」
「触れてはいけないところに触れる」

という意味だと思っていないでしょうか。

しかし、本来の意味は違います。

「琴線に触れる」とは、良いものや素晴らしいものに触れて、
心が動かされたり深く感動したりすることを意味します。
辞書では「良いものや素晴らしいものに触れて感銘を受けること」と説明されています。

文化庁の平成27年度「国語に関する世論調査」では、
本来の意味である「感動や共鳴を与えること」を選んだ人が38.8%、
「怒りを買ってしまうこと」を選んだ人が31.2%でした。

この記事では、「琴線に触れる」の本来の意味や誤解されやすい理由、
正しい使い方、「心に響く」との違いを例文とともに分かりやすく解説します。

「琴線に触れる」の意味とは?

「琴線に触れる」は、「きんせんにふれる」と読みます。

ここでいう「琴線」とは、単に琴の糸を指しているのではありません。

「琴線」には、人の心の奥深くにある、物事に感動したり共鳴したりしやすい感情を、
琴の糸にたとえた意味があります。

そのため「琴線に触れる」は、

心の中にある琴の糸に何かが触れ、美しい音が響く

ようなイメージから、深く感動する・心を動かされるという意味で使われます。

例えば、

彼女の言葉が私の琴線に触れた。

なら、「彼女の言葉に腹が立った」という意味ではありません。

その言葉に共感したり、心を動かされたりしたという意味です。

「琴線に触れる=怒らせる」は間違い?

本来、「琴線に触れる」に「相手を怒らせる」という意味はありません。

辞書でも、「琴線に触れる」は良いものなどに触れて感銘を受けることを意味するとされ、
「不愉快になる」という意味の場合には「気に障る」などの表現が挙げられています。

整理すると、次のようになります。

表現意味
琴線に触れる感動する・共鳴する・心を動かされる
気に障る相手を不快にさせる
逆鱗に触れる目上の人などを激しく怒らせる

「触れる」という言葉から「触れてはいけないものに触れる」という印象を持ちやすいですが、
琴線は怒りのポイントを表す言葉ではありません。

文化庁の調査では31.2%が「怒りを買う」と回答

文化庁の平成27年度「国語に関する世論調査」では、
「琴線に触れる」の意味について尋ねています。

結果は次のとおりです。

意味割合
感動や共鳴を与えること38.8%
怒りを買ってしまうこと31.2%
両方の意味3.4%
全く別の意味4.8%
分からない21.8%

文化庁は「感動や共鳴を与えること」を、
辞書等で主に本来の意味とされるものとして示しています。

平成19年度調査では、本来の意味が37.8%、「怒りを買ってしまうこと」が35.6%でした。

平成27年度では「怒りを買う」を選んだ割合は31.2%まで下がっていますが、
約3割の人が本来とは異なる意味を選んでいることから、
現在でも間違えやすい表現の一つだと分かります。

なぜ「琴線に触れる」は間違えやすい?

一つの理由として考えられるのが、
「触れる」という言葉からネガティブな表現を連想しやすいことです。

日本語には、

「逆鱗に触れる」
「気に障る」
「神経に障る」

など、相手を怒らせたり不快にさせたりする表現があります。

そのため、「琴線に触れる」も「相手の触れてはいけない部分に触れてしまう」
という意味のように感じる人がいると考えられます。

しかし、「琴線」は感動・共鳴しやすい心情を琴の糸にたとえた言葉です。

「怒り」ではなく、感動する心の糸が響くと覚えると分かりやすいでしょう。

「琴線に触れる」の正しい使い方・例文

例文1:言葉

先生から掛けてもらった言葉が、私の琴線に触れた。

先生の言葉に深く感動した、という意味です。

例文2:音楽

この曲の美しいメロディーは、多くの人の琴線に触れた。

音楽を聴いた人たちが感動したり共鳴したりしたことを表しています。

例文3:作品

彼の作品には、人々の琴線に触れるものがある。

作品に、人の心を動かす魅力があるという意味です。

「琴線に触れる」と「心に響く」の違い

「琴線に触れる」と意味が近い表現に、「心に響く」があります。

表現ニュアンス
琴線に触れる心の奥にある感情に触れ、感動や共鳴を起こす
心に響く強く感動し、印象に残る

「心に響く」は、辞書でも「強く感動して印象に残ること」と説明されており、
「琴線に触れる」と非常に近い表現です。

例えば、

彼のスピーチが琴線に触れた。

彼のスピーチが心に響いた。

は、どちらも自然です。

ただし、「琴線に触れる」の方が、
心の奥深い感情や共鳴に触れるという少し文学的なニュアンスがあります。

「怒らせた」と言いたい場合の言い換え

相手を怒らせたり不快にさせたりしたことを表したい場合は、「琴線に触れる」ではなく、

気に障る
不快にさせる
怒りを買う
逆鱗に触れる

などを使うと意味が伝わりやすくなります。

例えば、

その発言は上司の琴線に触れた。

では、上司が「感動した」のか「怒った」のか、
意図とは違う意味で受け取られる可能性があります。

怒らせたことを伝えたいのであれば、

その発言は上司の逆鱗に触れた。

など、意味に合った表現を選びましょう。

「琴線に触れる」についてよくある質問

「琴線に触れる」の読み方は?

「きんせんにふれる」と読みます。

「琴線に触れる」は良い意味?

基本的には、感動したり共鳴したりすることを表す良い意味の表現です。

「琴線に触れる」は「怒らせる」という意味?

本来は違います。

「琴線」は、心の奥にある感動・共鳴しやすい感情を琴の糸にたとえた言葉です。

文化庁の平成27年度調査では「怒りを買ってしまうこと」を選んだ人も31.2%いましたが、
本来の意味とはされていません。

「心の琴線に触れる」という言い方は正しい?

使われる表現です。

『精選版 日本国語大辞典』でも「心の琴線に触れる」が掲載されており、
人の心の奥を揺り動かし、深い感動や共鳴を引き起こすことを表します。

「琴線に触れる」と「心に響く」は同じ?

意味はかなり近いですが、完全に同じ表現ではありません。

「琴線に触れる」は感動や共鳴を起こすこと、
「心に響く」は強く感動して印象に残ることを表します。

まとめ

「琴線に触れる」は、
良いものや素晴らしいものに触れ、深く感動したり共鳴したりすることを意味します。

「相手を怒らせる」「触れてはいけない部分に触れる」という意味ではありません。

覚えるなら、

本来:感動する・共鳴する・心を動かされる
よくある誤解:相手を怒らせる

と整理すると分かりやすいでしょう。

文化庁の平成27年度調査では、
本来の意味を選んだ人が38.8%、「怒りを買ってしまうこと」を選んだ人が31.2%でした。
意味を確実に伝えたいときは、「心に響く」「感動する」などに言い換えるのもおすすめです。

参考資料・出典

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