「すべからく」の意味とは?「すべて」は誤用?正しい使い方と例文

「すべからく」の意味や「すべて」との違い、正しい使い方を解説するアイキャッチ画像言葉の意味

「すべからく」という言葉を、「すべて」「みんな」という意味で使っていませんか。

たとえば、

参加者はすべからく会場に集まった。

という文章を「参加者全員が集まった」という意味で使うのは、本来の用法とは異なります。

「すべからく」とは、「当然」「ぜひとも」という意味を表す言葉です。

多くの場合、「すべからく~べきだ」のように、後ろに「べし」「べき」などを伴って使われます。
辞書でも「当然」「ぜひとも」という意味で説明されています。

この記事では、「すべからく」の意味や語源、「すべて」は誤用なのか、
正しい使い方や例文、「おしなべて」との違いまで分かりやすく解説します。


「すべからく」の意味とは?

「すべからく」は漢字で「須く」と書きます。

意味は、

当然。ぜひとも。

です。

特に、

すべからく~べきだ
すべからく~べし

という形で使われることが多く、
「当然~するべきだ」「ぜひとも~しなければならない」という意味になります。

たとえば、

学生はすべからく勉学に励むべきだ。

なら、

学生は当然、勉学に励むべきだ。

という意味です。

「すべからく=すべて」ではないことが最大のポイントです。


「すべからく」を「すべて」の意味で使うのは誤用?

辞書等で本来の意味とされてきた用法では、
「すべて」「皆」という意味で使うのは適切ではありません。

たとえば、

この店の商品はすべからく値上がりした。

という文章を、

この店の商品はすべて値上がりした。

という意味で使うのは、本来の用法とは異なります。

「すべからく」は数や範囲の全部を表す言葉ではなく、
「当然」「ぜひとも」という話し手の判断や必要性を表す言葉だからです。

整理すると次のようになります。

表現意味
すべからく当然・ぜひとも
すべて全部・残らず
おしなべて全体的に・概して

「すべからく」と「すべて」は音が似ていますが、意味は異なります。


文化庁の調査では32.1%が「すべて・皆」と回答

文化庁の令和2年度「国語に関する世論調査」では、

学生はすべからく勉学に励むべきだ。

という例文を示し、「すべからく」の意味について調査しています。

結果は次のとおりです。

回答割合
「当然、是非とも」54.8%
「すべて、皆」32.1%
両方9.1%
まったく別の意味1.8%
無回答2.2%

文化庁は「当然、是非とも」を、辞書等で本来の意味とされてきたものとして紹介しています。

一方、「すべて、皆」と答えた人も32.1%いました。

つまり、令和2年度調査では約3人に1人が「すべて・皆」という意味を選んだことになります。


平成22年度と比べるとどう変わった?

「すべからく」は平成22年度にも調査されています。

意味平成22年度令和2年度
当然・是非とも41.2%54.8%
すべて・皆38.5%32.1%

ただし、文化庁は調査方法が変更されているため、
過去の結果との比較には注意が必要としています。

そのため、「誤用が減った」と単純に断定するのではなく、

令和2年度調査では、本来の意味とされる回答の割合が平成22年度より高かった

程度に捉えるのが適切でしょう。


なぜ「すべて」と間違えやすい?

大きな理由として考えられるのが、「すべからく」と「すべて」の音が似ていることです。

「すべからく」という言葉だけを見ると、

すべて
すべからく

の響きが近いため、「全部」という意味を連想しやすくなります。

しかし、「すべからく」の成り立ちは「すべて」とは別です。

辞書では、動詞の「す」に助動詞「べし」が付いた
「すべし」から生まれた表現と説明されています。

そのため、

すべからく → すべき

と関連付けて覚えると間違えにくくなります。


「すべからく~べき」の使い方

「すべからく」は、多くの場合「べし」「べき」など、義務や当然を表す表現と一緒に使われます。

正しい例

社会人はすべからく、自分の仕事に責任を持つべきだ。

「社会人は当然、自分の仕事に責任を持つべきだ」という意味になります。

正しい例

指導者たる者、すべからく公平であるべきだ。

「指導者なら当然、公平であるべきだ」という意味です。

注意したい例

社員はすべからく出席した。

これを「社員は全員出席した」という意味で使うのは、本来の使い方とは異なります。

「社員は全員出席した」とするのが自然です。


「すべからく」の正しい使い方・例文

例文1:仕事

責任者はすべからく状況を正確に把握すべきだ。

「責任者なら当然、状況を把握すべきだ」という意味です。

例文2:教育

学ぶ者はすべからく、自ら考える姿勢を持つべきである。

「学ぶ者なら当然そうするべきだ」という意味になります。

例文3:規則や心得

組織の一員はすべからく規則を守るべきだ。

「組織の一員なら当然規則を守るべきだ」という意味です。

「全員が実際に守っている」という事実を表しているのではない点に注意しましょう。


「すべからく」と「おしなべて」の違い

「すべからく」と混同されやすい言葉が「おしなべて」です。

言葉意味
すべからく当然・ぜひとも学生はすべからく学ぶべきだ
おしなべて全体的に・概して今年の新入社員はおしなべて優秀だ

「おしなべて」は、複数のものをまとめて見たときに、全体としてある傾向にあることを表します。

そのため、

今年の商品はすべからく好評だった。

と「全体的に好評だった」という意味で言いたい場合は、

今年の商品はおしなべて好評だった。

とする方が適切です。


「すべて」と言いたいときの言い換え

「すべからく」を「すべて」の意味で使いたくなった場合は、
文章に応じて次の言葉に置き換えられます。

すべて
全部を指す最も一般的な表現です。

商品はすべて完売した。

全員
人について「一人残らず」という意味で使えます。

参加者は全員到着した。

おしなべて
全体として同じような傾向にあることを表します。

今年の作品はおしなべて評価が高かった。

つまり、「全部」を言いたいときに「すべからく」を使わないと覚えておけば、
多くの誤用を防げます。


「すべからく」についてよくある質問

「すべからく」の読み方は?

「すべからく」と読みます。

漢字では「須く」と書きます。

「すべからく」は「すべて」という意味?

辞書等で本来の意味とされてきた用法では違います。

「すべからく」は「当然」「ぜひとも」という意味です。

「すべからく」の後には必ず「べき」が必要?

「べき」だけに限定されるわけではありませんが、
辞書では多くの場合「べし」を伴うと説明されています。

現代語では「すべからく~べきだ」と覚えると、意味を理解しやすいでしょう。

「すべからく」と「おしなべて」は同じ?

違います。

「すべからく」は「当然・ぜひとも」、「おしなべて」は「全体的に・概して」という意味です。

「すべからく」はビジネスで使える?

使うことはできますが、やや硬く古典的な表現です。

相手に分かりやすく伝えることを優先するなら、
「当然」「ぜひ」「~すべき」などに言い換えた方が自然な場合もあります。


まとめ

「すべからく」は、「当然」「ぜひとも」という意味の言葉です。

「すべて」「皆」という意味ではありません。

覚え方としては、

すべからく → 当然・ぜひとも~すべき
すべて → 全部・皆
おしなべて → 全体的に・概して

と整理すると分かりやすいでしょう。

文化庁の令和2年度「国語に関する世論調査」では、
本来の意味とされてきた「当然、是非とも」を選んだ人が54.8%、
「すべて、皆」を選んだ人が32.1%でした。

特に文章やビジネスで使う場合は、「すべて」と混同せず、
「当然~すべきだ」という文脈で使うことを意識するとよいでしょう。

参考資料・出典

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