「流れに棹さす」という言葉を聞いて、
「流れに逆らうことでは?」
「物事の邪魔をするという意味?」
と思ったことはないでしょうか。
実は、「流れに棹さす」の本来の意味はその反対です。
「流れに棹さす」は、ある傾向に乗って、
その勢いをさらに増すような行為をすることを意味します。
文化庁も、本来の意味としてこの意味を示しています。
一方、「流れに逆らって勢いを失わせる」という意味に理解する人も非常に多く、
文化庁の調査では本来とは異なる意味を選んだ人の方が多い結果となっています。
この記事では、「流れに棹さす」の本来の意味や由来、なぜ逆の意味に誤解されるのか、
正しい例文や言い換えまで分かりやすく解説します。
「流れに棹さす」の意味とは
「流れに棹さす」は、
傾向に乗って、ある事柄の勢いを増すような行為をすること
という意味の慣用句です。
文化庁の資料にも、この意味が「本来の意味」として示されています。
読み方は、
ながれにさおさす
です。
例えば、ある商品が急に注目され始めたとき、その人気を利用して広告を増やし、
さらに販売を伸ばすような行動は「流れに棹さす」と表現できます。
つまり、
「流れに乗る」
「勢いをさらに強める」
という方向の言葉です。
「流れに逆らう」という意味ではない
特に注意したいのが、
「流れに棹さす=流れに逆らう」ではない
という点です。
「棹をさす」と聞くと、
流れている水に棒を差し込んで流れを止めるようなイメージを持つかもしれません。
しかし、実際の由来は逆です。
デジタル大辞泉では、「流れに棹さす」を、
流れに棹をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進むことと説明しています。
そのため、
「彼の発言が計画の流れに棹さし、話が進まなくなった」
というように「邪魔をする」という意味で使うのは、本来の意味とは異なります。
「流れに棹さす」は多くの人が逆の意味に理解している
「流れに棹さす」は、実際にかなり誤解されている言葉です。
文化庁の「国語に関する世論調査」では、
| 意味 | 平成24年度 |
|---|---|
| 傾向に乗って、勢いを増す | 23.4% |
| 傾向に逆らって、勢いを失わせる | 59.4% |
という結果が紹介されています。
つまり、本来とは逆の意味を選んだ人が約6割でした。
以前の調査でも同じ傾向が見られます。
平成14年度調査では、本来の意味を選んだ人が12.4%だったのに対し、
逆の意味を選んだ人は63.6%でした。
平成18年度調査でも、本来の意味が17.5%、本来とは異なる意味が62.2%となっています。
この結果からも、「流れに棹さす」は意味を反対に捉えられやすい代表的な慣用句だと分かります。
なぜ「流れに逆らう」と誤解されるの?
では、なぜこれほど多くの人が逆の意味に理解しているのでしょうか。
国立国語研究所の「ことば研究館」では、
その理由の一つとして、現代では船を操るために棹を水底にさして進む光景を
見る機会がほとんどなくなったことを挙げています。
現在の感覚では、
「流れに棒を突っ込む」
↓
「流れを邪魔する」
↓
「流れに逆らう」
とイメージしてしまいやすいのでしょう。
しかし本来は、
「棹を使って舟を進める」
↓
「水の流れに乗って進む」
↓
「勢いに乗って物事を進める」
というイメージです。
棹は流れを止めるためではなく、舟を進めるために使われていた
と覚えると分かりやすいでしょう。
「流れに棹さす」の由来
「棹(さお)」とは、舟を進めたり操ったりするために使う長い棒です。
舟に乗った人が棹を川底などに突き立て、その力を利用して舟を進めます。
そこから、
水の流れに乗って舟を進める
→ 物事の流れに乗って勢いを増す
という意味になりました。
国立国語研究所も、「流れに棹さす」は
船を操るための棹を水底にさして船を進める様子に由来すると説明しています。
「流れに棹さす」の正しい使い方・例文
「流れに棹さす」は、
すでにある良い流れや勢いを利用して、さらに物事を進める場面で使います。
仕事での例文
新商品の売れ行きが好調なので、広告を増やして流れに棹さすことにした。
すでに売れている商品の勢いを、広告によってさらに強めるという意味です。
ビジネスでの例文
市場拡大の流れに棹さす形で、当社も新しいサービスを投入した。
市場全体の勢いに乗って事業を進める場面で使えます。
日常での例文
チームは連勝中で、新加入の選手の活躍がさらに流れに棹さした。
良い流れが続いているところに、新たな要素が加わって勢いが増したという意味です。
社会の動きについての例文
健康志向の高まりに棹さすように、関連商品の市場も急速に拡大した。
すでに起きている社会の傾向に乗って、さらに動きが大きくなる場面でも使えます。
「流れに棹さす」の間違った使い方
次のような使い方には注意が必要です。
× 彼の反対意見が流れに棹さし、計画が進まなくなった。
この文章では「流れを妨げる」という意味で使われています。
本来の「流れに棹さす」とは逆です。
この場合は、
「計画に水を差した」
「計画の流れを妨げた」
「勢いをそいだ」
などと表現した方が正確です。
「流れに棹さす」と「水を差す」の違い
「流れに棹さす」を誤解すると、「水を差す」に近い意味だと思ってしまうことがあります。
しかし、この二つは方向性が大きく異なります。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 流れに棹さす | 流れに乗って勢いを増す |
| 水を差す | 順調な物事を邪魔する |
つまり、
流れに棹さす=勢いを後押しする
水を差す=勢いを邪魔する
と覚えると分かりやすいでしょう。
「流れに逆らう」という意味を表したい場合も、「流れに棹さす」ではなく、
「流れに逆らう」「水を差す」「勢いをそぐ」など、
文脈に合う言葉を使う方が伝わりやすくなります。
「流れに棹さす」の言い換え・類語
本来の意味に近い表現としては、次のようなものがあります。
流れに乗る
物事の勢いや傾向を利用して、順調に進むことです。
「流れに棹さす」を現代的で分かりやすく言い換えるなら、「流れに乗る」が使いやすいでしょう。
波に乗る
物事が順調に進み、勢いがついている状態を表します。
例:「新サービスが波に乗り、利用者が急増した」
勢いを加速させる
ビジネス文書などでは、「流れに棹さす」よりも意味が直接伝わります。
誤解を避けたい場面では、
「流れに乗る」「勢いを増す」「勢いを加速させる」
などに言い換えるのがおすすめです。
「流れに棹さす」は現在も誤用なの?
本来の意味から考えれば、
「流れに逆らって勢いを失わせる」という使い方は本来の用法ではありません。
一方で、国立国語研究所は、本来とは異なる理解が広がる現象について、
単純に誤用と決めつけるだけでなく、言葉の意味変化として見る視点も必要だと説明しています。
ただし、「流れに棹さす」は本来の意味と逆の意味で理解する人が多いため、
実際の会話では注意が必要です。
特に仕事や文章では、
「流れに乗って勢いを増す」
などと具体的に言い換えた方が、誤解されにくいでしょう。
場面によってどう使い分ければいい?
「流れに棹さす」は本来の意味を知っていても、相手が逆の意味に理解する可能性があります。
そのため、言葉の正しさだけでなく、使う場面に合わせて表現を選ぶことが大切です。
| 使う場面 | おすすめ |
|---|---|
| 日常会話 | 相手に意味が伝わるなら 「流れに棹さす」でもよい |
| ビジネス | 「流れに乗る」「追い風を生かす」 などが分かりやすい |
| 報告書・説明資料 | 「勢いを増す」「傾向を後押しする」 など具体的に書く |
| 言葉の意味を説明するとき | 「流れに棹さす」を本来の意味で使う |
例えば、会議で、
「この施策で市場の流れに棹さしましょう」
と言った場合、「流れを後押しする」という意味を知らない人には、
反対の意味で受け取られる可能性があります。
その場合は、
「市場の追い風を生かして、さらに販売を伸ばしましょう」
と表現した方が、意図が明確です。
一方、小説や評論などで言葉そのもののニュアンスを生かしたい場合は、
本来の意味を理解したうえで「流れに棹さす」を使って問題ありません。
「正しい言葉を使うこと」と「相手に正しく伝わること」は必ずしも同じではありません。
誤解される可能性が高い場面では、より具体的な表現に言い換えるのがおすすめです。
「流れに棹さす」についてよくある質問
「流れに棹さす」の読み方は?
「ながれにさおさす」と読みます。
「棹」は、舟を操るために使われる長い棒を意味します。
「流れに棹さす」は「流れに逆らう」という意味ですか?
本来は違います。
「ある傾向に乗って、その事柄の勢いを増す」という意味です。
「流れに棹をさす」と書いてもいい?
「流れに棹さす」という形が慣用句として一般的ですが、
「流れに棹をさす」と表現される場合もあります。
「棹」は「さお」と読みます。
「流れに棹さす」の反対の意味を表す言葉は?
文脈によりますが、
「流れに逆らう」
「水を差す」
「勢いをそぐ」
「妨げる」
などが使えます。
ビジネスで「流れに棹さす」を使っても大丈夫?
意味としては使えますが、逆の意味に理解する人が多い言葉なので注意が必要です。
重要な場面では、「流れに乗って勢いを増す」「追い風を生かす」などに
言い換えた方が伝わりやすいでしょう。
「流れに棹さす」のように、本来とは逆の意味に捉えられやすい日本語はほかにもあります。
「役不足」や「確信犯」などをまとめた「意味を間違えやすい日本語30選」も、
あわせて確認してみてください。
まとめ
「流れに棹さす」は、
ある傾向に乗って、その事柄の勢いをさらに増すような行為をすること
を意味します。
「流れに逆らう」「邪魔をする」という意味ではありません。
文化庁の平成24年度調査として紹介されている結果では、
本来の意味を選んだ人が23.4%だったのに対し、
本来とは異なる「傾向に逆らって勢いを失わせる」という意味を選んだ人は59.4%でした。
意味を覚えるポイントは、
棹を水に入れて流れを止めるのではなく、棹を使って舟を進める場面をイメージすることです。
ただし、本来とは逆の意味に理解する人が多いため、相手に正確に伝えたい場面では、
「流れに乗る」「勢いを増す」などと言い換えると分かりやすいでしょう。

