「話し合いが煮詰まってきた」と聞いたとき、
「話が進んで結論が出そう」
「話が進まなくなって困っている」
どちらの意味だと思うでしょうか。
「煮詰まる」は、本来、
議論や意見が十分に出尽くし、結論を出せる段階に近づくことを表す言葉です。
ところが現在では、「行き詰まって先に進めない」という意味でも使われています。
辞書によっては、この新しい使い方も掲載されています。
この記事では、「煮詰まる」の意味や「行き詰まる」との違い、
現在の使われ方、正しい使い方を例文とともに分かりやすく解説します。
「煮詰まる」の意味とは?
「煮詰まる」は「につまる」と読みます。
もともとは、煮物などを煮て水分が少なくなることを表す言葉です。
そこから意味が広がり、話し合いや議論について、
議論や意見が十分に出尽くし、結論を出せる段階に近づく
という意味でも使われるようになりました。
例えば、
「何度も話し合った結果、ようやく計画が煮詰まってきた。」
という場合は、話し合いが進まなくなったのではありません。
十分に検討が進み、結論が出そうな段階まで来たという意味になります。
「煮詰まる=行き詰まる」は間違い?
「煮詰まる」を、
「考えても良い案が出ない」
「話し合いが進まない」
という意味で使うことがあります。
本来の意味から考えると、「煮詰まる」と「行き詰まる」は異なる言葉です。
しかし現在では、「煮詰まってアイデアが出ない」のように、
「行き詰まる」に近い意味で使われる例も広がっています。
小学館『デジタル大辞泉』では、
本来の「結論が出る段階に近づく」という意味を掲載したうえで、
近年は「行き詰まる」の意味でも使われることが多くなっていると説明しています。
また、『精選版 日本国語大辞典』では
「行き詰まってどうにもならなくなる」という意味も収録されています。
そのため、現在の「煮詰まる」は、
正反対に近い二つの意味で受け取られる可能性がある言葉だと考えておくとよいでしょう。
文化庁の調査ではどちらの意味が多い?
文化庁の平成25年度「国語に関する世論調査」では、
「七日間に及ぶ議論で計画が煮詰まった。」という例文について意味を尋ねています。
結果は次のとおりです。
| 意味 | 割合 |
|---|---|
| 議論や意見が十分に出尽くして、 結論が出る状態になる | 51.8% |
| 議論が行き詰まり、結論が出せない状態になる | 40.0% |
本来の意味とされる方を選んだ人がやや多いものの、
「行き詰まる」という意味を選んだ人も4割に上っています。
さらに年代別では、40代以下では「結論が出せない」という意味を選んだ割合が5割を超え、
50代以上では本来の意味を選んだ割合が5割を超えるという結果でした。
「煮詰まる」は、世代によって受け取り方が異なる可能性がある言葉だと分かります。
「煮詰まる」と「行き詰まる」の違い
本来の意味で比較すると、二つの言葉には大きな違いがあります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 煮詰まる | 議論や検討が十分に進み、 結論を出せる段階になる |
| 行き詰まる | 物事が進まなくなり、先へ進めない状態になる |
簡単に整理すると、
ゴールが近づいている → 煮詰まる
先へ進めなくなる → 行き詰まる
と覚えると分かりやすいでしょう。
例えば、
「会議も煮詰まってきたので、そろそろ結論を出そう。」
なら、話し合いが十分に進んでいるという意味です。
一方、
「意見がまとまらず、会議が行き詰まっている。」
なら、話し合いが進まなくなっていることを表します。
「煮詰まる」の正しい使い方・例文
例文1:会議
「議論もかなり煮詰まってきたので、最終案を決めましょう。」
十分に意見が出て、結論を出す段階に近づいているという意味です。
例文2:計画
「新商品の計画が煮詰まり、来月から準備に入ることになった。」
計画の検討が進み、具体的な内容がまとまってきたことを表しています。
例文3:話し合い
「話し合いが煮詰まったところで、改めて全員の意見を確認した。」
話し合いを十分に重ね、結論を出せる状態になっているという使い方です。
「煮詰まってアイデアが出ない」はどう言い換える?
現在では、
「仕事に煮詰まってしまった。」
「考えが煮詰まって何も思いつかない。」
といった表現も使われています。
ただし、「煮詰まる」を本来の意味で受け取る人には、逆の意味に聞こえる可能性があります。
「先に進めない」という意味を確実に伝えたいなら、
「行き詰まる」
「考えがまとまらない」
「良い案が浮かばない」
「進展がない」
などに言い換えると分かりやすくなります。
特に仕事や正式な文章では、
どちらの意味なのかが一目で分かる表現を選ぶと誤解を防ぎやすいでしょう。
なぜ「煮詰まる」は反対の意味でも使われる?
「煮詰まる」は、
現在では「結論に近づく」と「行き詰まる」という異なる意味で使われています。
国立国語研究所の研究でも、「煮詰まる」の「行き詰まる」という用法について、
単純な言い間違いだけではなく、実際の使用例をもとに意味変化の過程が研究されています。
また、文化庁の調査でも年代によって受け取り方に大きな違いが見られます。
そのため、「こちらの意味しか存在しない」と考えるより、
本来の意味を知りつつ、現在は別の意味でも使われていることを理解しておくのがよいでしょう。
「煮詰まる」についてよくある質問
「煮詰まる」の読み方は?
「につまる」と読みます。
料理では、煮ることで水分が少なくなることを意味します。
「煮詰まる」は良い意味ですか?
本来の使い方では、議論や検討が十分に進み、
結論を出せる段階になったことを表すため、必ずしも悪い意味ではありません。
例えば「計画が煮詰まってきた」は、計画が完成に近づいているという意味で使えます。
「煮詰まる」と「行き詰まる」は同じですか?
本来は異なります。
「煮詰まる」は議論などが十分に進んで結論に近づくこと、
「行き詰まる」は物事が進まなくなることを表します。
ただし現在は、「煮詰まる」を「行き詰まる」の意味で使う例も広がっています。
ビジネスで「煮詰まる」を使っても大丈夫?
使えますが、受け取る人によって意味が異なる可能性があります。
「結論に近づいている」と伝えたいなら「議論がまとまってきた」、
「進めなくなった」と伝えたいなら「議論が行き詰まっている」など、
具体的に表現すると誤解を避けやすくなります。
まとめ
「煮詰まる」は、本来、
議論や意見が十分に出尽くし、結論を出せる段階に近づくことを意味します。
一方、現在では「行き詰まって先へ進めない」という意味でも使われています。
文化庁の平成25年度調査では、
本来の意味とされる方が51.8%、「行き詰まる」という意味が40.0%でした。
覚えるなら、
本来:議論が進んで結論に近づく
現在見られる使い方:行き詰まって先に進めない
と整理すると分かりやすいでしょう。
意味が正反対に近いため、誤解を避けたい場面では「話がまとまってきた」「行き詰まっている」
など、具体的な言葉に置き換えるのもおすすめです。
参考資料・出典
文化庁「平成25年度 国語に関する世論調査」
小学館『デジタル大辞泉』「煮詰まる」(コトバンク)
国立国語研究所学術情報リポジトリ「“煮詰まる”の使用実態と意味変化の過程」


