「憮然」の意味とは?「怒っている」は誤用?正しい使い方と例文

「憮然」の意味や「怒っている」という誤解、文化庁の調査結果、「憤然」との違いを解説するアイキャッチ画像言葉の意味

「憮然とした表情」と聞くと、

「怒っている顔」
「むっとして不機嫌な様子」

を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

しかし、「憮然」の本来の中心的な意味は少し違います。

「憮然」とは、失望・落胆して、どうすることもできずぼんやりしている様子を表す言葉です。

また、意外な出来事に驚き、あきれている様子を表す場合もあります。

『デジタル大辞泉』では、
「腹を立てている」という意味での使用は本来は誤りと説明されています。

この記事では、「憮然」の意味や読み方、「怒っている」という意味は誤用なのか、
文化庁の調査結果、「憤然」との違い、正しい使い方・例文まで分かりやすく解説します。

「憮然」の意味とは?

「憮然」は、「ぶぜん」と読みます。

『デジタル大辞泉』では、

失望・落胆して、どうすることもできないでいる様子

また、

意外なことに驚き、あきれている様子

という意味で説明されています。

たとえば、

努力が報われなかった彼は、憮然としてその場を立ち去った。

なら、怒って立ち去ったというより、
失望・落胆してぼんやりした状態で立ち去ったという意味になります。

「憮」の漢字には「がっかりする」という意味がある

「憮」は普段あまり目にしない漢字ですが、
漢字ペディアでは「憮」に「がっかりする」という意味が掲載されています。

そのため、

憮然 → がっかり・失望している様子

と関連付けて覚えると、本来の意味を思い出しやすくなります。

「怒る」という漢字の意味から生まれた言葉ではない点もポイントです。

「憮然=怒っている」は誤用?

『デジタル大辞泉』では、「憮然たる面持ち」などを「腹を立てているような顔つき」の意味で
使うことについて、近年よく見られるものの、本来は誤りと説明しています。

つまり、本来の意味に沿って使うなら、

彼は憮然として席を立った。

を、

彼は腹を立てて席を立った。

という意味だけで使うのは避けた方がよいでしょう。

「激しく怒っている」と伝えたい場合は、「憤然」など別の言葉の方が適しています。

文化庁の調査では56.7%が「腹を立てている」と回答

文化庁の平成30年度「国語に関する世論調査」では、

憮然として立ち去った。

という例文を示し、「憮然」の意味について尋ねています。

結果は次のとおりです。

回答割合
失望してぼんやりとしている様子28.1%
腹を立てている様子56.7%
両方6.3%
全く別の意味1.5%
分からない7.4%

文化庁は「失望してぼんやりとしている様子」を本来の意味とされるものとして示しています。

しかし、本来とは異なる「腹を立てている様子」を選んだ人は56.7%で、
本来の意味を選んだ28.1%の約2倍でした。

つまり、「憮然=怒っている」と理解する人は決して珍しくありません。

過去の調査でも「怒っている」が多数派

文化庁は平成19年度と平成15年度にも「憮然」を調査しています。

意味平成15年度平成19年度平成30年度
失望して
ぼんやりしている
16.1%17.1%28.1%
腹を立てている69.4%70.8%56.7%

平成30年度では本来の意味を選ぶ割合が以前より高くなっていますが、
それでも「腹を立てている」を選んだ人の方が多い結果でした。

そのため、「憮然」という言葉を使うと、
書き手と読み手で意味の受け取り方が変わる可能性がある点には注意が必要です。

現在は「不機嫌」という意味でも使われる?

ここは、「怒っている=完全な誤用」とだけ説明すると不正確です。

『デジタル大辞泉』では「腹を立てている」という使い方を本来は誤りとしていますが、
『精選版 日本国語大辞典』には、

「不機嫌なさま・不興なさま」

という意味も掲載されています。

そのため、現在の辞書の扱いまで考えると、

本来の中心:失望・落胆・茫然
広がった用法:不機嫌・不興
「激しく怒る」と明確に表したい場合:憤然などが適切

と整理すると分かりやすいでしょう。

「憮然とした表情」とはどんな顔?

「憮然とした表情」は、本来の意味に沿えば、

失望・落胆した表情
驚きあきれて、ぼんやりした表情

という意味になります。

たとえば、

期待していた企画が中止になり、彼は憮然とした表情を浮かべた。

であれば、期待を裏切られて失望している様子を表しています。

一方で、現在は「むっとした顔」「不機嫌そうな顔」という意味で受け取られることも多いため、
文章では文脈を分かりやすくしておくとよいでしょう。

「憮然」の正しい使い方・例文

例文1:失望する

予想外の結果を聞き、彼は憮然としてその場に立ち尽くした。

期待とは違う結果を受け、失望してぼんやりしている様子です。

例文2:落胆する

長年準備してきた計画が中止となり、担当者は憮然とした表情を見せた。

怒りというより、落胆してどうすることもできない状態を表しています。

例文3:あきれる

あまりにも予想外の返答に、彼女は憮然として相手を見つめた。

意外な出来事に驚き、あきれている様子を表す使い方です。

例文4:結果を受け止める

努力が実らなかった選手は、憮然とした面持ちで会場を後にした。

失望・落胆している様子を表しています。

「憮然」と「憤然」の違い

「憮然」と特に間違えやすいのが、「憤然(ふんぜん)」です。

言葉読み方主な意味
憮然ぶぜん失望・落胆してぼんやりする
憤然ふんぜん激しく怒る

「憤然」は、『デジタル大辞泉』でも「激しく怒るさま」と説明されています。

たとえば、

失望して席を立った。
→ 憮然として席を立った。

ひどく腹を立てて席を立った。
→ 憤然として席を立った。

と使い分けることができます。

憮然=失望
憤然=憤り・怒り

と覚えると区別しやすいでしょう。

「憮然」の類語・言い換え

「憮然」は、伝えたい状況に応じて言い換えることもできます。

落胆する

期待どおりにならず、がっかりすることです。

結果を聞いて落胆した。

失望する

期待を裏切られて望みを失うことを表します。

彼の態度に失望した。

茫然とする

驚きやショックなどによって、ぼんやりしている状態です。

突然の知らせに茫然とした。

憤然とする

怒りをはっきり表したい場合の言い換えです。

失礼な発言に憤然として席を立った。

「憮然」を「怒っている」という意味で使おうとしている場合は、
「憤然」や「腹を立てる」の方が意図が伝わりやすいことがあります。

「憮然」についてよくある質問

「憮然」の読み方は?

「ぶぜん」と読みます。

「憮」には「がっかりする」という意味があります。

「憮然」は怒っているという意味?

本来の中心的な意味は、失望・落胆してぼんやりしている様子です。

ただし、現在は不機嫌な様子を表す用法も辞書に掲載されています。

「憮然とした表情」は怒った顔?

本来の意味では、失望・落胆した顔や、驚きあきれた表情を指します。

ただし「不機嫌な表情」の意味で理解されることも多いため、文脈には注意が必要です。

「憮然」と「憤然」は同じ?

違います。

「憮然」は主に失望・落胆、「憤然」は激しい怒りを表します。

「憮然」はビジネスで使える?

使うことはできます。

ただし、「失望」と「怒り」のどちらなのか誤解されやすい言葉なので、
意味を正確に伝えたい場合は、

「落胆した」
「失望した」
「不機嫌な様子だった」

など具体的な表現に言い換える方が分かりやすい場合もあります。

まとめ

「憮然」は、本来、失望・落胆してどうすることもできず、
ぼんやりしている様子を表す言葉です。
また、意外なことに驚きあきれている様子を表す場合もあります。

文化庁の平成30年度「国語に関する世論調査」では、
「失望してぼんやりとしている様子」を選んだ人が28.1%、
「腹を立てている様子」を選んだ人が56.7%でした。

覚えるなら、

憮然=失望・落胆
憤然=激しく怒る

と区別すると分かりやすいでしょう。

ただし、現在の辞書には「不機嫌・不興」という意味を掲載しているものもあります。
そのため、「怒っている=絶対に誤り」と単純化するのではなく、
本来の意味と現在広がっている用法を分けて理解することが大切です。

参考資料・出典

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